本日、『大正新修大蔵経』「図像部」全12巻を、公式に公開するにいたりましたことをここにご報告申し上げ、ご尽力いただきました関係各位に、深く感謝申し上げる次第であります。
過去より継承されてきた伝統は、それを再発見し、個々の時代の要請に即して表現する力に出会うことよって、ふたたび輝き出します。1500年を超える日本仏教の歴史のなか、諸寺院、経蔵、大学、図書館に個別に保存されつづけてきた壮大な仏教世界の図像は、1934年、『大正新修大蔵経』の出版という企図を通し、世界のひとびとの前に燦然とそのすがたを現しました。
爾来、80数年の星霜を経た現在、無数ともいえる世界の諸伝統の文化的財産が、ウェブサイトという広大な一つの地平に集約され、そこから万人に向けて開かれはじめています。この過程で明らかになってきたことは、第一に、伝統の価値を適切に表現するには専門家の知恵が集約される場が必要とされること、第二に、表現された価値が、世界の一流の基準によって共有可能なものになっていることであります。
ここに公開しました図像部画像データベースは、東京文化財研究所・津田徹英氏が率いる、日本美術、仏教美術、仏教学等、各分野の専門研究者43名が集って各図像を専門的見地から精密に分析し、その成果のうえに、英国図書館やフランス国立図書館等を中心として構成される、国際的デジタルアーカイブのスタンダードIIIF (International Image Interoperability Frameworkの規格にもとづいて、一般財団法人人文情報学研究所主席研究員・永崎研宣氏がシステム構築をいたしました。また、利用許諾条件については、デジタル時代の新たなかたちでの知の発展に貢献すべく、クリエイティブ・コモンズライセンス表示・継承(CC BY-SA)を採用しております。日本はもとより、アジアでもおそらく初の画期的試みが、世界に向けて発信されますこと、心より悦ばしく思います。
公開については、大蔵出版株式会社社長・石原大道氏の全面的な応援をいただき、また事業の推進については、日本学術振興会科学研究費事業基盤研究S「仏教学新知識基盤の構築(15H05725)」(代表・下田正弘)、同・研究成果公開促進費・データベース(15HP8001)(代表・津田徹英)の支援をいただきました。ここに記して篤く御礼申し上げます。
仏教美術を理解してゆくためには、そこに顕現した諸尊の姿かたちを手がかりに、尊名の特定を行うとともに、それが何をあらわしているかを正しく把握することからはじまるといっても過言ではありません。その目的のために、これまで多大に寄与してきたのが『大正新脩大藏經』圖像編でありました。そこには仏教諸尊の画像情報を、関連する経典・儀軌の文言の引用、あるいは、関連の儀礼情報とともに収載しています。そのソースとなったものは、平安・鎌倉時代を中心に南北朝時代に及んで編纂されてきた密教図像集の類であり、それらを網羅的に収録しています。なかには入唐あるいは入宋留学僧たちによってわが国にもたらされた図像情報も含まれています。それゆえ『大正新脩大藏經』圖像編は、日本にとどまらず、中国・韓半島を含む東アジアにおける仏教美術研究においても欠くことのできない基本資料となっており、加えて、隣接諸領域に属する仏教学、国文学、日本史、東洋史などの分野においても資するところは少なくありません。
しかしながら、これまで『大正新脩大藏經』圖像編において、得たい情報にたどりつくためには、頁を一枚ずつめくりながら自分で情報を収集してゆくしか手段がなく、誰もがデジタル時代に対応した画像検索、情報検索ができることを希求していました。本サイトは、既に『大正新脩大藏經』全85巻についてのデータベースを立ち上げ、研究と利用の便を図ってきた実績があます。そこで、これに引き続いて、『大正新脩大藏經』圖像編に収められた諸尊の図像に関して、断片的な情報(面数、臂数、持物、印相、装身具など)を語彙入力することで、全十二巻に及んで横断的に検索し、尊格の特定や類似尊の収集の便をはかることをめざしました。あわせてSAT大正新脩大藏經データベースを併用することで、『大正新脩大藏經』全85巻とリンクしながら必要とする仏尊情報を得られることも可能となりました。なお、改良の余地がある箇所については、今後も適宜、運用評価を行いつつ利便性の向上を目指してまいりたいと考えます。
SAT大正蔵圖像DBは、上述の通り、大正新脩大藏經圖像全12巻の頁画像と各尊像の姿かたちについて付与したタグから成っています。この絵引の手法立案と収集語彙については津田徹英氏の工夫になるものです。また、絵引のためのデータ入力については、津田氏の指揮の下、全国の研究者・大学院生・学生(下記参照)が参加してWebコラボレーションシステム上で作成されました。この作業については今後も運用評価を行い、充実させていく予定です。
なお、SAT大正蔵図像DBを利用した成果を公開する際には、SAT大正蔵図像DBを利用したことを明記していただきますと、SAT大正蔵図像DB事業の継続についての大きな貢献となりますので何卒よろしくお願いいたします。また、その旨についてSAT大蔵経データベース研究会までお知らせいただけますと幸甚に存じます。
SAT大正蔵図像DBは、CC BY-SAライセンスの下で公開いたします。全体としては大蔵出版及びSAT大蔵経データベース研究会が権利者となります。各絵引の内容については個々に貢献者名が記載されていますのでご参照ください。
SAT大正蔵図像DBの構築運用にあたっては、上記の科研費データベース事業以外に、JSPS科研費 15H05725 15HP8001 の助成を受けています。
右第一指
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左第二指 未指定 屈 伸 左第三指 未指定 屈 伸 左第四指 未指定 屈 伸 左第五指 未指定 屈 伸 |